AED普及前事故例、AEDで救えた命
ーその時、AEDがあったらー
AED普及前の事故事例
日本で心肺蘇生法が注目されることになったきっかけの一つは、1986年、バレーボール試合中の突然死でした。
手当を受けられなかったバレーボール選手
しかし、試合は中断することもなく、ハイマン選手は救命措置も受けずに担架で外に運び出されて、2日後に亡くなってしまいました。
アメリカ出身のフロー・ハイマン選手は、ロサンゼルスオリンピックで米国代表にも選ばれた有数のエースアタッカーであり、当時32歳でした。
ハイマン選手の事故は海外でも大きく取り上げられましたが、最も問題になったのは、主催者、スタッフの対応でした。
──日本人はなぜ、心肺蘇生をしないのか?──
当時、すでに欧米では、「事故・急病の時は、救急車が来る前に、一般市民が心肺蘇生を施すのが当然」とされていたのに対し、日本では、スポーツの心臓への負担、心肺蘇生法の重要性がほとんど認識されていませんでした。
この事故をきっかけに、日本でも救命救急治療への取り組みが始まりました。
しかし、それから6年後、さらなる悲劇が起りました。
手当を受けられたのに……高円宮殿下
2002年11月21日、カナダ大使館でスカッシュに興じていた高円宮殿下(当時47歳)が突然倒れ、帰らぬ人となってしまいました。
高円宮殿下は、倒れた時にすぐに心肺蘇生法を受け、さらに、救急車も早急に到着し、応急処置後、病院に運ばれて適切な治療を受けましたが助かりませんでした。
それは、倒れた時に「心室細動」状態であり、すぐにAEDで「除細動」をする必要があったのではないかと考えられています。
この場合の「すぐ」とは、2分以内、「倒れてすぐ」です。
どんなに救急車が急いで駆けつけても、5分以上はかかります。その場にAEDがなければ、使えません。
高円宮殿下の事故以来、心肺蘇生だけではなく、AEDの重要性も広く知られるようになりました。
また、その後も下記のように運動中の心臓突然死事故が続いたことから、AEDの設置が進み、一般人でも使えるようになりました。
- 2002年11月 「福知山マラソン」で58歳の男性、59歳の男性が相次いで倒れ、死亡
- 2002年11月 「名古屋シティマラソ」で58歳の男性が倒れ死亡
- 2002年12月 ハワイ「ホノルルマラソン」で日系人ランナーがゴール直前で倒れ、死亡
- 2003年 2月 「ふくやまマラソン5km」で44歳男性が倒れ、死亡
- 2003年 2月 「鹿沼さつきマラソン」において44歳男性が倒れ、死亡
- 2003年 5月 「黒部名水ロードレース10Km」において、29歳男性がゴール直前で倒れ、 死亡
- 2003年 6月 サッカーの国際大会「コンフェデレーションズカップ」の準決勝で、 カメルーン代表のフォエ選手が心臓突然死と推測される急病で死亡
- 2003年10月 「琵琶湖マラソン」で25歳の男性、51歳の男性が相次いで倒れ、死亡
- 2004年 1月 サッカー「ポルトガルリーグ」試合中に24歳のハンガリー代表選手が倒れ、 死亡
- 2004年12月 サッカー「フェデレーションズカップ」決勝試合中に、ブラジル人選手が倒れ、死亡
心臓突然死は誰にでも起こりえます
私たちが思っている以上に、心臓突然死による死亡例は多く、年間4万人、1日に100人以上の人が、心臓が原因で突然死しているといわれています。
上の例であげたように、マラソン、運動中の事故だけではなく、ストレスや緊張、疲労でも、心臓突然死は起ります。
また、その中には、健康診断で異常のない人、運動が好きで体力に自信のある人もたくさんいます。
では、なぜ、心臓突然死が起るのでしょう。
それは、誰でも年齢とともに少しづつ体力が落ちていくように、体にも負担がかかっていくからです。血液の流れが悪くなり、心臓の動きも悪くなっていきます。
日常生活では健康そのものでも、急激な運動やストレスなど、なんらかの環境の変化で、隠れていた負担が一気に吹き出して発作を起こすと考えらています。
心臓発作を起こすほとんどの人は、自覚症状も予兆もなく、突然、倒れ、意識を失います。
現代社会に生きる人なら、誰でも、何かのきっかけで、発作を起こしてしまうかもしれないということです。
もう少し詳しく説明していきましょう。
日頃の過労、運動の過不足、食生活などが原因で、体が少しづつ悪くなっていくことは「生活習慣病」といわれます。
厚生労働省は「生活習慣病」からなる病気として、糖尿病、脳卒中、心臓病、高脂血症、高血圧、肥満をあげ、さらに心臓病について、5つに分類しています。
- 1. 動脈硬化が原因となる虚血性心疾患。生活習慣病の一つ。狭心症や心筋梗塞はこれに分類される。
- 2. 脈の乱れを起こす病気。不整脈、心房細動、心室細動、房室ブロックなど。
- 3. 生まれつき心臓に問題がある先天性心臓病。心房中隔欠損、肺動脈狭窄など。
- 4. 心筋の病気、心臓弁膜の病気、心膜の病気など。
- 5. そのほかの病気。心肥大、精神的な原因から起こる心臓神経症など。
つまり、日頃は健康でも、上記のような問題をかかえていれば、いつ、心臓発作を起こしてもおかしくないということなのです。
(上記のどれが原因の心臓発作でも、すぐにAEDで処置できれば、命をとりとめる可能性があります)
この中でも、(1)の「虚血性心疾患」は、多くの健康に問題がないと思っている人が、密かに抱えている基礎疾患です。
よほど食生活に気をつけている人でない限り、現代の食生活は、肉が多く野菜が少なくなりがちです。その結果、肥満・糖尿病・高血圧・高脂血症が進んで、動脈硬化と共に心臓の血管が血栓などで詰まり、血液の流れが悪くなっていきます。
それが、激しい運動など心臓の活動が活発になるときに発症しやすくなります。ほかにも、起床2時間以内、過度のストレス、過労、飲酒後などにも起ります。
通勤途中、深酒をして就寝した後、残業続きで帰宅した後、などの心臓突然死もこれに当てはまります。
発症年齢としては30歳を越えると増加しはじめ、60歳代が最も多く、また男性が多いのが特徴です。
怖いのは、急性心筋梗塞発作で救急車搬送された例では、約3割以上が病院到着前に死亡していることであり、心筋梗塞を発症する人の50%は、その前になんの予兆も自覚症状もないことです。50%の人は、狭心症による胸の痛みの経験がありますが、急性心筋梗塞はやはり突然、起ります。
もちろん、食生活、生活習慣を気をつけることで、心臓突然死の可能性は低くなります。
それでも、万が一、心臓発作が起きてしまった時、その瞬間に命を救えるAEDが必要といえるでしょう。
子どもに多い心臓震盪(しんぞうしんとう)
心臓突然死が起るのは成人だけではありません。過度の緊張、運動、ストレス、ショックにさらされた未成年にも起りますが、未成年、特に子どもに多いのが心臓震盪です。
キャッチボールで3000万円和解 小5男児突然死、原告訴えを認められる
亡くなった少年の両親は、死因は野球の軟式ボールが胸に当たったことによる「心臓震盪(しんぞうしんとう)」として、公園で一緒にキャッチボールをしていた男児2人の両親を相手に6300万円の損害賠償を求めました。仙台地裁は原告側の主張を認め、6000万円の支払いを命じ、高裁まで持ち込まれた結果、和解金3000万円で決着しました。
参考:心臓震盪から子供を救う会
「心臓震盪」は、30歳までに多く、特に胸壁のやわらかい子どもに起こりやすい症状です。
胸部に衝撃が加わった時に、心臓のリズムが崩れ、心臓の痙攣、つまり「心室細動」が起きます。心臓震盪は外傷が無くても、軽く当たっても起ります。ただ当たった勢いやショックで倒れたように見えるかもしれませんが、非常に危険な状態なのです。
野球やソフトボールの球が胸にあたった時の事故例がほとんどですが、空手の正拳突き、サッカーやバスケットボールを胸で受けた時、子供同士のふざけあいなどでも起こった事例があります。
「心臓震盪」が起こる確率は限りなく低いとされていますが、万が一、起ってしまった時は大問題に発展してしまうでしょう。
中学3年生、サッカーボールを胸に受け死亡
病院に運ばれましたが、既に心肺停止状態で、その9日後に亡くなってしまいました。
男子生徒は心臓に既往症はなく、また、学校にはAEDが設置されていませんでした。
もともと健康な心臓がなんらかの原因で心室細動に陥った場合、AEDで除細動できれば蘇生する確率は限りなく高いとされています。
こうした事故をきっかけに、学校や公園、体育館でのAED設置も増えています。
AEDで救われた命
アメリカでは、2001年に連邦航空局による全旅客機へのAED搭載を皮切りに、連邦政府ビル、空港、カジノ、一般企業、学校、公的施設へのAED配備が進んでいます。シカゴのオヘア国際空港では、通行人がAEDを使用し、2年間に心停止18例のうち、11例の蘇生に成功しました。
日本国内のマラソン大会で、初めてAEDで命を救えたのは、2005年に大阪府で行われたマラソン大会です。
第12回泉州国際市民マラソンでランナーがAED使用
男性の近くを走っていた、マラソンの参加ランナーのうち、救急救命士、医師、看護師らがただちに心肺蘇生法を開始、さらに並走していた救護車のAEDを使ったところ、心拍、呼吸ともに戻りました。
男性は高齢とはいえ、マラソン歴25年、フルマラソン出場も60回を越すベテランでした。原因は心筋梗塞だったそうです。
イベントでもAEDが設置されるのが、常識になりつつあります。
2005年 愛知万博「愛・地球博」の蘇生例
4月、50代の女性の呼吸が停止しました。この時は、救急隊がAEDで心電図を取りながら、救急措置を行い、呼吸を戻しました。
8月、40代の男性が心肺停止で倒れましたが、近くにいた医学生3人がAEDを使い、蘇生しました。 3例とも、AED使用後、病院に運ばれ、後遺症もなかったそうです。
学校に設置されたAEDで生徒の命が救われた例も増えてきました
高校野球児の心臓震盪、観戦中の救急救命士が救う
上記の例はたまたま医療関係者が現場に居合わせたことも幸いしていますが、東京マラソンでは、一般人でもAEDを使えることを生かしボランティアが活躍しました
ボランティアが活躍した東京マラソン
その結果、38キロ地点で倒れた59歳の男性はすぐに救護所に搬送され、また、41キロ地点で倒れた男性は、自転車で駆けつけたモバイルAEDが蘇生を行い、それぞれ無事に回復しています。
突然の心肺停止は、運動中だけでなく、人が集まる場所、駅、学校、イベント会場、オフィスでは、いつ遭遇しても、不思議ではありません。AEDの設置が進み、AEDについて知る人が増えれば、救われる命ももっと増えるでしょう。
*上記でご紹介した事故例は、複数の報道、報告を元に作成いたしました。
AED設置例ー神奈川県 相模原市・藤沢市ー
神奈川県内の相模原市・藤沢市の公共施設を例に挙げて、どのような場所に実際AEDが配備されているのかをご紹介します。
相模原市 (30施設31台)
・市役所本館 ・市民会館 ・南合同庁舎 ・グリーンホール相模大野 ・杜のホールはしもと ・あじさい会館 ・けやき会館 ・総合体育館 ・北総合体育館 ・総合水泳場 ・銀河アリーナ ・相模川自然の村 ・渓松園 ・若竹園 ・新磯ふれあいセンター ・図書館 ・博物館 ・市民健康文化センター ・北市民健康文化センター ・南保険福祉センター ・サンエール相模原 ・市営斎場 ・中央保健センター(ウェルネス) ・相模原消防署 ・南消防署 ・北消防署 ・麻溝台分署 ・相陽分署 ・東林分署 ・相原分署 ・貸出用(相模原消防署)
藤沢市 (18施設18台)
・遠藤市民センター ・秩父宮記念体育館 ・御所見市民センター ・湘南大庭市民センター ・藤沢市民会館 ・長後市民センター ・六会市民センター ・片瀬市民センター ・湘南台市民センター ・善行市民センター ・鵠沼市民センター ・湘南台文化センター ・辻堂市民センター ・村岡公民館 ・秋葉台文化体育館 ・明治市民センター ・藤沢公民館 ・鵠沼運動施設事務所
神奈川県以外でも、行政の主催するスポーツイベントなどでは、その都度、AEDを救護車両にのせるなどして、心臓発作に備えています。
*レンタルは1日単位でお受けします。
*ご注文は仮予約となります。
詳しくは、レンタルの手順をご覧下さい。
